AWSの運用とは?コストだけじゃない!代行や保守サービスの注意点も解説

株式会社サイバーセキュリティクラウド

投稿日:2025/08/13

AWSを導入した企業が直面する課題の1つとして、AWSの適切な運用管理が挙げられます。

AWSは従量課金制の特性上、コスト管理をしっかりする必要があるうえ、安定稼働を実現するための監視体制の確立やセキュリティ対策まで、AWSの運用には幅広い業務が必要となります。

この記事では、AWS運用の基本概念や具体的な注意点などをわかりやすく解説します。また、外部サービスを活用しAWSの運用する企業も多いですが、外部サービスを選定する際の注意点も説明します。

適切な運用方針を策定し、自社に最適な運用方法を見つけるための参考にしてください。

AWSの運用とは?

AWSの運用とは、AWS環境の安定稼働を維持するために実施する一連の業務プロセスを指します。具体的には、システムの稼働状況監視、スケール調整、パフォーマンス最適化、セキュリティ管理、定期メンテナンスなどが含まれます。

AWSでは「責任共有モデル」という考え方を採用しており、AWS がホストオペレーティングシステムと仮想化レイヤーから、サービスが運用されている施設の物理的なセキュリティに至るまでの要素を AWS が運用、管理、および制御しますが、それ以外に関してはユーザーの責任になります。

そのため、自社のAWS環境の安定稼働を維持するには、稼働状況の監視や適切なセキュリティ対応などの運用を実施しなければなりません。

AWS運用のベストプラクティス:AWS Well-Architected

適切なAWS運用を実現するためには、AWSが公開しているベストプラクティス「AWS Well-Architected」というフレームワークを参考することがおすすめです。

AWS Well-Architectedは、高い安全性、性能、障害耐性、効率性を備えたインフラ構築を支援するフレームワークで、6つの柱があります。ここでは、各項目について詳しく説明します。

オペレーショナルエクセレンス(運用上の優秀性、OE)の柱

オペレーショナルエクセレンス(OE)では、新機能やバグ修正を迅速かつ確実にシステム利用者へ提供するために、システムが正しく構築されているかを重視する評価項目です。

OEを高めるには下記の4つの重要な要素があります。

  1. 組織(Organization): チーム全体でワークロードや自身の役割、ビジネス目標を正しく理解し、共通認識を持つことが重要です。そのうえで、各業務の優先順位を明確に設定できることが理想です。
  2. 準備(Prepare):運用を行うために、ワークロードの詳細や期待される動作を十分に理解し、ワークロードを監視を可能にするオブザーバビリティが必要です。オブザーバビリティによって、異常や潜在的な問題を早期に発見し、迅速な対処が可能になります。また、OEを高めるためにワークロードの運用上のリスクを把握することも重要です。
  3. 運用(Operate): オブザーバビリティを活用することで、チームにとって不要なデータを排除し、重要なインサイトのみに集中できます。潜在的な課題の予測や対処がしやすくなるため、ワークロードがより円滑に動作でき、チームのビジネス目標の達成につながります。
  4. 進化(Evolve): OEを維持するために、継続的な学習・共有・改善が重要です。インシデントの分析をしっかり行い、再発防止策に取り組むことで顧客への影響を最小化に抑えることができます。また、インシデント対応の知見をチーム内で共有することで、企業全体の成長にも寄与します。

セキュリティの柱

セキュリティの柱では、、AWS 上のワークロードが脅威から適切に保護されているか、またリスクを継続的に評価・管理できているかを確認します。適切なアクセス管理、インシデントの検出・対応体制、そしてデータの機密性・完全性の確保などが重視されます。

AWS環境では、従来のオンプレミスとは異なるセキュリティアプローチが必要であり、多層防御による包括的な保護が必要不可欠です。ネットワークのエッジ、ロードバランサー、インスタンス、OS、アプリケーション、データなど各レイヤーに適したセキュリティ対策を講じる必要があります。

また、アクセス制御の設定も重要です。最小権限の原則に基づいたIAMポリシーの設計により、不要なアクセス権限付与を防ぎ、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

さらに、セキュリティインシデントに備えることも大事です。検出、対応、修復のためのプロセスやシミュレーションをあらかじめ用意し、自動化ツールやログ分析、通知などを活用することで、インシデント対応の精度とスピードを向上させましょう。

信頼性の柱

信頼性の柱では、システムが期待通りに機能し続け、障害や変更が発生しても迅速に回復できるかを評価します。特にAWS環境における回復力(Resiliency)が重要であり、サービス停止がユーザーに与える影響を最小限に抑える設計が求められます。

例えば、分散システムの設計により障害の影響範囲を限定し、あらかじめ策定した復旧計画を通じて迅速な対応を行うことで、システムの信頼性を高めることができます。

さらに、信頼性を実現するためには、基盤構成、ワークロードの設計、継続的な運用管理(監視・変更管理・バックアップ)といった複数の観点をバランスよく設計・実装することが求められます。

パフォーマンス効率の柱

パフォーマンス効率の柱では、AWS上でワークロードの性能を最適化し、リソースを効率的に活用することを目指します。これにより、変化する要求にも柔軟に対応しながら、高いパフォーマンスを維持できます。

例えば、データ処理や機械学習、メディアトランスコーディングなどの高度なタスクは、NoSQLデータベースやAIサービスなどを活用することで、開発チームが本来の業務(製品開発など)に集中しやすくなります。

また、Amazon CloudFrontのようなエッジサービスを活用することで、グローバルな配信性能を高めることができます。

さらに、サーバレスアーキテクチャを用いることでインフラ管理の負担を軽減し、スケーラブルで効率的なアプリケーション運用が可能になります。
パフォーマンス効率を維持するためには、新しいテクノロジーの採用、リソースの最適な組み合わせ、そして継続的なモニタリングによる改善が重要です。

コスト最適化の柱

コスト最適化の柱では最小限のコストで最大限のビジネス成果を実現することを目指します。不要なコストを回避しながら、投資対効果(ROI)を高めるために、継続的なコスト管理と改善が求められます。

AWSは従量課金制を採用しており、サービスの使用量を可視化・管理することで、月々の費用を正確に把握できます。

コストを最適化するために、定期的なコスト分析を行い、無駄な支出や未使用のリソースを停止したりして、効率的なリソース活用を推進することが必要です。さらに、各リソースの費用とビジネス価値を比較し、ROIを評価することで、より効果的なリソース配分を行うことができます。

支出に対する明確な責任を設定し、使用状況を測定しながら、需要に応じたリソースの最適化を継続的に行うことが、コスト最適化の実現につながります。

持続可能性(サステナビリティ)の柱

持続可能性の柱では、AWS上でのワークロードが環境に与える影響を最小限に抑え、長期的に持続可能なITシステムを構築することを目的としています。将来にわたって社会やビジネスの機能を維持できるようにするための取り組みです。

具体的には、1つのホストの使用率を最大化してリソース効率を高めたり、使用率の低いストレージやプロセスを削減したりすることで、エネルギー消費を抑えることが挙げられます。

また、マネージドサービスの活用、データ転送の最適化、より効率的なリージョンの選択も、持続可能性を高める有効な手段です。

AWS運用における注意点とは?コストだけじゃない

AWS運用において、コスト管理以外にもセキュリティ対策やバックアップ管理など、さまざまな注意点があります。ここでは、特に重要な3つの注意点について詳しく解説します。

コストの適切管理

AWSは従量課金制を採用しており、使用した分のだけ費用が発生する仕組みです。そのため、利用しているリソースと使用量を適切に管理することで、コストを効果的に節約ができます。

一方で、管理を怠ると予想外のコストが発生してしまう可能性があります。特に、データ転送量の増加や未使用リソースの放置によって費用が膨らむ恐れがあるため、継続的な監視やリソースの定期的な見直しを行い、無駄なコストを抑えることが重要です。

AWSの利用コストを把握するためには、AWS Cost ExplorerやAWS Budgetsなどのサービスを活用することがおすすめです。コスト予測やアラート設定などの機能が備わっており予算管理の自動化やコスト超過の防止に役立ちます。

セキュリティ対策

企業のシステムやデータを保護するためには、セキュリティサービスを適切に導入し、継続的に運用していくことが必要です。

セキュリティ対策がどの程度実現できているかを測る方法としては、AWSセキュリティ成熟度モデル(AWS Security Maturity Model)を活用することがおすすめです。

AWSセキュリティ成熟度モデルでは、セキュリティ対策を、「アイデンティティとアクセス管理」「脅威検出」など9つのカテゴリに分類し、それぞれのカテゴリに4つのフェーズが設定されています。

一般的には、すべてのカテゴリにおいてフェーズ2:基礎(Foundational)を達成することが最低限必要とされています。まずは自社のセキュリティ対策を洗い出し、基礎レベルに達していない項目を特定し、優先的に改善することが推奨されます。

ただし、AWSセキュリティ成熟度モデルに記載されている内容はあくまでも推奨事項であり、すべてを実施したからといってセキュリティが万全になるわけではありません。強固なセキュリティを実現するためには、自社が直面するリスクや脅威を正確に把握し、それに応じたセキュリティ対策を検討する必要があります。

バックアップ管理

AWS上でのデータ管理は利用者の責任範囲となります。AWSではバックアップが自動的に行われるわけではないため、データ損失や障害に備えて、定期的なバックアップの実施と適切な管理が必要です。

バックアップ対象はファイルだけでなく、Amazon EC2インスタンスのスナップショットやAmazon RDSデータベースのバックアップなども含まれます。必要に応じて適切な方法でバックアップをしましょう。

また、AWS Backupを活用することで、バックアップ作業の一部を自動化することができます。自動化によってバックアップ関連の手動作業を削減し、効率的かつ確実なデータ保護を実現できます。

悩みがちのAWSセキュリティの運用:注意点を解説

AWS運用において、特にセキュリティ分野に課題を感じる担当者は多く技術的な難易度の高さや責任範囲が広いため、どこから手をつけるべきか判断に迷うケースが多く見られます。

ここでは、AWSのセキュリティ運用に関する注意点を解説します。

AWSのセキュリティサービスが多すぎて、どれを導入すべきかわからない

AWSは責任共有モデルに基づき、さまざまなセキュリティサービスを提供しています。しかし選択肢が多すぎるために、どのサービスを導入すべきか判断に迷う企業は少なくありません。。

例えば、ID・アクセス管理領域では、AWS IAM、Amazon Cognito、AWS Organizationsなどがあり、検出・対応領域には、Amazon GuardDuty、Amazon Inspector、AWS Configなどがあります。

さらにネットワーク・アプリケーション保護領域では、AWS Network Firewall、AWS WAF、AWS Shield、データ保護領域には、AWS KMS、AWS CloudHSM、AWS Secrets Managerなど数多くのサービスが存在します。

それぞれのサービスについて一つひとつ理解し、自社のセキュリティニーズに適したサービスを選定するのは容易ではありません。その結果、自社に最適なサービスを導入できていない企業も多く見受けられます。

また、セキュリティサービスに対する誤った認識により、思わぬセキュリティホールが生じるリスクもあるため、正しい知識に基づいた選定と設計が重要です。

アラートが多すぎて対応しきれない

セキュリティサービスを導入すると、リスクが検知されるたびにアラートが発生します。しかし、アラートの数が多すぎて対応しきれないケースは少なくありません。

すべてのアラート内容を確認し、優先度の高いアラートに対してのみ対策を講じることが望ましいですが、システム規模によっては一日に数万件のアラートが発生することもあり、限られたリソースでは対応しきれず、結果的に放置されてしまうケースもあります。

こうした状況を防ぐには、アラート対応に十分な人員を確保するか、、MSS(マネージドセキュリティサービス)などを活用することをおすすめします。

セキュリティ人材が不足している

適切なAWSセキュリティサービスを選定・運用するためには、専門的な知識を持つセキュリティ人材が必要です。しかし、日本国内では人材が圧倒的に不足しており、多くの企業が採用に苦戦しています。

実際、日本のセキュリティ人材の不足数のギャップは年々拡大しています。世界最大のサイバーセキュリティ専門家資格の非営利団体ISC2の調査によると、セキュリティ人材の不足数は2023年の約11万人から2024年の約17万人へと悪化しています。セキュリティ人材の数はわずかに増加しているものの需要の上昇には追いついていません。

その一方で、サイバー攻撃はますます巧妙化しており、自社だけでの対応が困難になりつつあります。そのため、自社では対応しきれないログ監視や脅威分析などの業務を外部に委託するニーズが高まり、運用代行会社やMSSへの注目が集まっています。

AWS運用は代行保守会社に任せるべき?注意点を解説

セキュリティ人材の不足深刻化する中、AWSの運用を自社のみで対応することは困難になっています。そのため、運用代行や運用保守会社への委託を検討する企業が増加しています。

ここでは、外部サービスを活用する際の注意点とサービス選定時のポイントについて詳しく解説します。

AWS運用のサービス内容

AWS運用保守サービスとは、AWS上で稼働するサーバやアプリケーションの運用管理や保守作業を代行するサービスです。

AWS運用保守サービスといえば24時間体制でAWS環境を監視し、トラブル発生時には迅速に対応してくれるというイメージを持たれがちですが、実際にはサービスごとに提供内容が異なりため、注意が必要です。

そのため、運用代行サービスを選定する際は、監視範囲と対応範囲をしっかり確認することが重要です。監視のみなのか、障害対応や原因調査など事後対応まで含まれるのかによって、サービス内容は大きく異なるため、自社のニーズにあったサービスを選定する必要があります。

また、日常的な運用業務の全般を任せられるサービスや、セキュリティ状況に応じたアドバイス・改善提案を行うサービスも存在します。より包括的な支援を求める場合は、そのようなフルサポート型のサービスを活用するのも1つの選択肢です。

運用代行会社のセキュリティ専門性には注意が必要

AWSの運用において、セキュリティ領域の対応は不可欠ですが、すべてのAWS運用代行会社がセキュリティに精通しているとは限りません。インフラ構築や保守には強くても、セキュリティについての知見が不足している会社も実際に存在します。

そのため、AWS運用代行サービスを選定する際に、セキュリティ分野の専門知識を有するベンダーを選定することが重要です。特にAWS特有のセキュリティ課題に対応した実績や知見を持つ企業を選定することが望まれます。

しかしながら、AWSセキュリティに精通した運用代行会社は限られているため、セキュリティ領域はMSS(マネージドセキュリティサービス)を導入する企業も増えています。

MSSを選ぶ場合は、「AWS MSSPコンピテンシー」認定企業によるサービスがおすすめです。AWS MSSPコンピテンシーを獲得している企業は、AWSによって公式に認定された企業であり、AWSリソースに対して24時間365日でのセキュリティ保護と監視を提供できる体制を備えているうえ、AWSセキュリティに関して充分な知見や知識があることを示しています。

AWSの認証を持つMSS提供企業を選定することで、セキュリティ体制の信頼性が高まり、より安心してAWS環境を運用することができるでしょう。

AWSセキュリティの運用ならCloudFastener(クラウドファスナー)

CloudFastener(クラウドファスナー)は、日本企業として初、世界で14社目となるAWS MSSPコンピテンシーパートナーに認定されたサービスです。

CloudFastenerは、AWSのセキュリティサービスを活用し、お客さまのAWS環境におけるリソースやアラートを包括的に管理するとともに、セキュリティ専門家による最適化された支援を提供。

脅威検知、脆弱性管理、データ保護、証跡監査、コンプライアンス対応などを、環境構成や組織体制に合わせて柔軟に実施し、ガバナンス・ポリシーの策定から復旧・修正対応など従来のMSSではカバーしきれない領域まで、AWSセキュリティの運用全体をワンストップで対応します。

さらに、高度な知識と経験を持つ専門チームがインソース型で支援するため、専任のセキュリティチームが不在の企業でも、自社の環境に合致したセキュリティ体制と対策を構築することができます。

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