最近よく聞くCNAPPとは?構成機能やCNAPPの落とし穴をわかりやすく解説
株式会社サイバーセキュリティクラウド
投稿日:2025/12/22
クラウド利用が前提となる現在、複数のクラウドサービスを横断してリスクを可視化し、脅威に対処する仕組みとしてCNAPP(読み方:シーナップ)が注目されています。
CNAPPを導入することでクラウドセキュリティの可視化は進みますが、CNAPP製品を導入しただけでは運用課題が残るケースも少なくありません。この記事では、CNAPPとは何か、どのような構成要素で成り立っているのか、さらに導入後に残る懸念までを整理して解説します。
CNAPPとは?
CNAPPとは「Cloud-Native Application Protection Platform」の略で、クラウド環境におけるセキュリティリスクを一元的に把握・管理するための統合プラットフォームを指します。既存システムのクラウド移行やクラウドの利用拡大に伴い、環境設定のチェック、ワークロードの脆弱性管理、IAM権限の監視などが個別に進められ、クラウドセキュリティの全体像を把握しづらくなる課題が生じていました。
CNAPPは、これら分断されがちな情報を一つの仕組みで統合し、設定不備、脆弱性、権限管理、実行中ワークロードの挙動など、クラウド全体のセキュリティ状態を横断的に確認できるようにする点が特徴です。管理対象が増え、クラウドの構造が複雑化する企業環境において、リスクの可視化と管理効率を高めるためのツールとして導入が進んでいます。
CNAPPの構成機能
CNAPPの構成要素には主要機能がいくつかあり、クラウドの脆弱性や設定不備を多面的に可視化します。ここでは代表的な3つの領域について整理します。
CSPM
CSPMとは「Cloud Security Posture Management」の略で、IaaS/PaaSで利用されるクラウドサービスの設定ミスの検知に特化した機能をもち、IAM設定、ネットワーク設定、ストレージの公開範囲などを評価します。クラウドベンダーが提供するベストプラクティスや各種ガイドラインと照らし合わせながら、リソースごとの設定が適切かどうかを機械的にチェックできる点が特徴です。セキュリティリスクとなり得る設定や状態を自動的に検出し、問題が顕在化する前に是正につなげることで、セキュリティインシデントの予防に役立ちます。
クラウド環境の状態管理に利用されることが多く、「不要な権限が付与されていないか」「どのクラウドリソースが、どのような設定で公開されているのか」「不必要に公開されている領域はないか」といった点を継続的に評価します。設定の抜け漏れや人為的なミスを早期に把握しやすくなるなど、CSPMはCNAPPにおいて基盤的な役割を担います。
CIEM
CIEMとは「Cloud Infrastructure Entitlement Management」の略で、権限管理に関連する領域で、IAM権限の過剰付与やロールの不整合を可視化します。先ほど説明したCSPMと組み合わせて利用されることも多くなっています。CSPMの機能の一部として提供されますが、権限管理の重要性が高まるにつれ、独立した領域として注目されつつあります。
権限設計が複雑になりやすい大企業のクラウド環境では、「誰が、どのリソースに、どんな権限でアクセスできるのか」を正確に把握することが難しくなります。CIEMは、権限の棚卸しや過剰権限の是正を支援することで、クラウド環境における権限まわりのリスクを抑えます。
CWPP
CWPPとは「Cloud Workload Protection Platform」の略で、クラウド上で動作するワークロードを保護するための仕組みです。具体的には、仮想マシンやコンテナなどの実行環境に対して、脆弱性や不審な挙動を監視・防御します。対象となるのはOSやミドルウェア、アプリケーションレイヤまでを含む実行環境そのものであり、「動いているもの」を守る役割を担います。
CSPMが主にクラウドの設定状態を対象とするのに対し、CWPPは実際に稼働しているワークロードそのものを対象とする点が大きな違いです。マルウェアの検知、脆弱なパッケージの把握、不審なプロセスの検知など、より実行時のリスクにフォーカスした領域です。
CNAPPでカバーできること
CNAPPを導入すると、クラウドセキュリティの運用を「単発のチェック」から「継続的な監視・管理」に切り替えやすくなります。個別のクラウドサービスやツールごとにばらばらに確認していた作業を、ある程度まとめて扱えるようになる点が特徴です。
例えば、新しく作成されたリソースや設定変更を自動で検出し、ポリシーから外れていないかを継続的にチェックできます。設定や権限にいつ、どの段階から問題があったのかも記録として残しやすくなり、社内報告や監査対応に必要な情報をまとめて取得できます。
また、システムごとに異なるクラウドベンダーを利用するケースも少なくありませんが、複数クラウドにまたがる環境でも、設定リスクや権限、ワークロードの状態を集約し、「どこで何が起きているのか」を可視化しやすくなります。
このように、CNAPPはクラウドセキュリティ運用の「状況把握」を大きく支援します。一方で、集約されたアラートを踏まえて「何から優先して対応するか」「どこまで踏み込んで改善するか」といった判断や実際の対処は引き続き自社側で考える必要があります。ここが、次の章で触れるCNAPP製品の落とし穴につながる部分です。
CNAPP製品の落とし穴に注意
CNAPP製品比較の際には、検知精度やダッシュボードの見やすさなどに目が向きがちですが、実際の運用で発生する負荷も考慮する必要があります。クラウド構成が複雑になるほど検知されるアラート数は増加し、どのアラートに優先的に対応すべきか判断に迷うケースが多くなります。
また、CNAPPは機能が多い分、導入コストやランニングコストが大きくなりやすい点にも注意が必要です。クラウド利用の拡大に伴い、CNAPPで管理する対象が増えるほどライセンス費などの費用も増加し、当初想定よりも負担が重くなる可能性があります。
カタログスペック上は十分に見えるCNAPP製品であっても、導入後に「アラートが多すぎて優先順位付けができない」「チームのリソースでは運用しきれない」といった問題が顕在化することがあります。
CNAPPを入れても、セキュリティ不安が残る理由
CNAPPはクラウド環境を包括的に可視化するうえで有効ですが、それだけで運用が完結するとは限りません。特に以下の3点は、多くの企業で課題となりやすいポイントです。
運用には専門知識が必要
CNAPPを導入したとしても、実際のリスク評価や対応方針の決定にはクラウド構成の理解やセキュリティの専門知識が必要になります。
IAM設計、ネットワーク構成、ワークロードのライフサイクルなど、複数の要素を踏まえた判断が求められるため、ツールの画面だけを見て「この設定で問題ない」と判断するのは容易ではありません。
そのため、CNAPPが出力するアラートを正しく解釈し、優先順位付けや対処方針の決定まで一貫して運用するには、セキュリティエンジニアなどの専門家が必要になります。こうした人材が社内にいない場合、アラートを十分に活用できず、対応が遅れたり判断が属人化したりする課題が残ります。
アラート過多で判断に迷う
CNAPP製品は設定不備や脆弱性を広範に検知できる一方で、前述の通り、環境規模が大きいほど、構成が複雑になるほどアラート数が膨れ上がります。
アラート自体は検知できても、「どれから対応すべきか」といった判断まで自動で行われることは多くありません。さらに、アラートに対応することでシステム設定や通信経路、権限などに変更が入り、業務システムに影響が出る可能性もあるため、影響範囲を踏まえた判断が必要になります。「ビジネス影響の観点で優先度が高いものはどれか」を見極めるには、ビジネス側の事情とアラート内容の両方を理解している必要があり、ツールだけで代替することは難しいのが実情です。その結果、重要なアラートへの対応が後回しになったり、担当者がアラートに追われ続けて疲弊したりするリスクがあります。
運用リソース不足
CNAPPはクラウド全体をカバーするため、多くのイベントやリスクを検知します。しかし、それらのアラートや検知情報をどう解釈し、どのような対応方針を取るかは、基本的にユーザー側に委ねられています。「検知したあとに何をするか」はツールではなく、運用体制の問題になります。
この状況を避けるには、CNAPPの運用を継続的に回せる体制が必要です。例えば、アラートを定期的にレビューして優先順位を付ける役割、影響範囲を整理して関係者と調整する役割、実際の是正対応を進める役割を明確にし、日々の運用プロセスとして回せる体制を作ることが求められます。
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CloudFastenerを導入することで、社内の担当者は数多くのアラートを一つひとつ精査するのではなく、優先度が整理されたタスクから順に対応を進めることができます。インフラや開発と兼務している体制でも、CloudFastenerのセキュリティチームと連携することで、クラウドセキュリティ対応を継続的に進めやすくなります。
CNAPPの導入でクラウド環境の可視化を進めつつ、アラート対応や運用負荷の課題も同時に解消したい企業にとって、CloudFastenerは自社だけでは対応しきれないリスクや運用の課題を補完しながら、クラウド環境の安全性を継続的に高めることができます。
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